「きらめき」文化講座案内

修験道と日本人の宗教観
〜修験霊地の歴史と文化を通じて〜


講師:村山 修一 氏(大阪女子大学名誉教授)

講義中の村山先生  講座の目的

 わが国土の大半を占める山岳に芽生えた修験道は、長い歴史の中で外来と固有の思想信仰を巧みに融和させ日本独特の宗教と文化をつくり出してきました。
 東北から中国地方までの代表的修験霊地について、日本人の多彩な宗教観を見直してみましょう。

  
  ある日の講座風景

 備前兒島の山伏が、天皇の病気平癒の功で朝廷より寄進を受けて兒島に神社や寺院を建てました。その後、次第に霊場として大きくなっていきました。
 時の政権に左右されながら盛衰をくりかえす霊場の歴史を、時代を追って、資料や地図を駆使して解説されています。
 最後に霊場めぐりの見所、宿泊地などの紹介もありました。
 ここまでの講座では、修験道を中心として日本の民俗宗教、歴史などを学んできました (熊野、金峰山、愛宕山、白山などの解説がありました)。

  講師のコメント

・古代における日本人は神や仏に対して一方を受容し、他方を排除するというようなことはしなかったのです。それぞれの教義等を柔軟に取り入れて独特な信仰体系を創り上げていきました。その代表的なものとして修験道をとらえています。
・日本人は呪術的な現象など論理を超えた原始的なるものを信仰していました。これはキリスト教のように一貫した合理的な思考形態ではないものです。
・日本人の宗教観は、中国から伝えられた陰陽道の影響を多分に受けています。この点において、宗教の国際的な融合が実現しており、これは外国では見られない日本独特のものであると言えます。
・修験道とは生活意識のひとつのあり方であると考えています。現代社会にあっても、随所に修験道の影響をみることができます。
そういう意味から、修験道は「俗に溶け込んだもの」と言ってもいいと思います。
                  
  受講生のコメント

・信仰や修験道に関心があったので申し込みました。講師はこの方面では有名な研究をしておられるので、話を聞きたいと思ったのです。
・講師の講義は緻密で計画性があり、資料も豊富です。内容は難しくて全部を理解することはできないのですが、大体は分かっているつもりです。
・今まで知らなかったことばかりで、勉強になります。分かりやすく良く教えていただいて、面白いので時間があっという間に過ぎてしまっています。
・仏教に元々興味があって役行者(えんのぎょうじゃ)とかも良く分からなかったから、勉強したいと思って受けています。講師の一言でハッと世界が広がる感じがします。
・とても楽しい。奈良から転居してきましたが、向こうでは修験者を見かけたり、また自分も修験道を歩いて見たりしたこともありました。もっと早くこの講座と出合っていたら違った視線で修験道を見ることができたと思います。

講座の様子 取材アシスタントの一言

・たくさんの方が半年で終わるのではなく一年続けて欲しいといわれていました。
・先生はご高齢とは思えないほど若々しくて元気なお方です。今でもなお研究途上にあるという思いがその秘訣でしょうか。
・伝承は伝承として、歴史的事実は事実として、区別して解説してくださるので非常に高度な内容なのに分かりやすい講義でした。他の霊場のお話もぜひお聞きしたくなりました。
・各国で起こっている宗教における宗派間の争いをみると、日本人の神仏習合などの宗教に対するおおらかさが印象深く心に残りました。