「きらめき」文化講座案内

陰陽道(おんみょうどう)と日本の政治・社会
  〜陰陽道の現代日本文化への影響〜


講師:村山 修一 氏(大阪女子大学名誉教授)

講義中の講師
  講座のねらい

 太古中国に起こった陰陽五行思想に基づく日本の陰陽道は政治・社会を魅了し日本人の思想・宗教に深く浸透し今日なお無意識のうちに日常的に伝統化しています。
 今その歴史を回顧して現代に照らし合わせて反省の契機にしましょう。

  ある日の講座風景
  
 取材した日は『平家物語』に登場する妖兆現象を通じて、陰陽道がいかに当時の社会に深く影響を与えていたかということを講義をされていました。 

 一般的に「祇園精舎の鐘の音・・・」で知られる『平家物語』は、「盛者心衰・諸行無常」を説いた浄土信仰を重んじる仏教思想であるといわれています。
  しかし、講師はこの物語の背景には陰陽道の思想(妖兆思想)があると説かれています。
  このような視点から、『平家物語』は、平氏の隆盛から衰えに至る節目節目に現れた重要な予兆を記載した物語であることを実証的に講義されていました。
 また九条兼実(関白太政大臣)が残した日記『玉葉』に記載された事柄と対比しながら話を進めることにより、受講者の理解はいっそう深められていきました。

 平安時代に重用された陰陽道も『太平記』の時代になると妖兆思想として現れる怪物を怖がらない風潮が広がり、ついで『愚管抄』や『徒然草』に至ると「妖兆は信用しなければ消える」と記載されるなど、この思想の凋落していく様を説かれました。
 結びに、いつの時代も世が乱れるときは政局が乱れていると現代に通じる教訓を語られました。
  
  講師のコメント
  
・平安時代には国家管理手段にもなった陰陽道でしたが、現代では当時の勢いを連想させるものは少なくなりました。
・しかし、現代でも暦や方位など、無意識の内に私たちの日常生活に伝統として大きく影響しています。また、漢方薬や薬膳料理などにもその思想は残されています。
・このように陰陽道が日本の文化史に残した足跡は計り知れないものがあります。陰陽道を通して歴史を振り返り、現代に照らして日常生活を省みる契機にしてもらえればと思います。

  受講生のコメント

・定年になり知らないことを学ぼうと思って受講しましたが、受講してよかったと思っています。
・同じ教室の方と会話ができ、仲間づくりの良い機会となっています。
・新しいことにチャレンジしたいと思い、受講しました。
・歴史に興味があり、自分の知っていることと、講師のお話を結びつけて考えることができてよかったです。
・史実中心に話されていますが、非常に分かりやすく聴講しています。欲をいえば、思想のところをもう少し突っ込んでいただけたらもっとよいかなと感じています。

  取材アシスタントのひとこと
 
・陰陽道を単なる易や卜占(ぼくせん)の面からではなく、日本の歴史に重要な役割を果たした文化史としてとらえ真摯(しんし)に研究されている講師のお姿を拝見しました。その研究成果をご高齢にもかかわらず、90分間の講座を通じて歴史を現代に照らしながら受講者に語りかけられる姿勢に感動しました。
・講座内容は、難しいと思っていましたが、時代背景を参考にしながら、講師の平易な解説でとても楽しく取材することができました。特に今日の講座では、妖兆の盛衰について『平家物語』や『太平記』を例にして解説されていましたが、妖兆思想についてさらに深く学んでみたいという気になりました。
講座風景=1 講座風景=2