「きらめき」教養講座案内

『紫式部日記』を読む
〜1000年前へのタイムスリップはいかが…〜


講師:岩井 宏子 氏(甲南女子大学非常勤講師)

  講座のねらい

 『紫式部日記』は、紫式部の鋭敏な感性を通して宮仕における見聞、感想や消息を書き綴った作品です。中宮のお産前後の様子から書き起こされた当作品は、当時の貴族社会がよくうかがえ『源氏物語』を読み解くには大いに参考になるものです。
 
また、紫式部がこの日記を書き始めてから
2008年はほぼ1000年目に当たり、『源氏物語』など平安文学に光を当てるよい機会になると思います。
 本講座では、初心者にも親しめるように原文を分かり易く解説しますので、平安文学への興味が深まることと確信しています。

  ある日の講座より

 この日の講座は、「
1016日 土御門殿邸行幸の日」の所でした。紫式部の鋭い観察眼でとらえた天皇行幸日の女官たちの様子や衣装、当時の貴族社会の様子が記述されています。先生は、邸の見取り図などを使ってていねいに解説しておられました。解説はこの日記に初めて触れる人にも分かり易く、受講者の皆さんは平安時代にタイムスリップしたかのように非常に楽しまれていました。

  講師のコメント

この日記は、今から1000年前の貴族社会の様子を客観的かつ詳細に書かれた随筆的な作品で、現代とは言葉や生活の異なる非日常的世界が楽しめる作品です。
『紫式部日記』や『源氏物語』は、かけがえのない日本の文化遺産で、文学のみならず、歴史的資料としての価値をもつものです。日本人としては知っておくべきものであり、“日本の心”として次世代に伝えて欲しいものです。
このすばらしい作品に少しでも触れていただき、現代とは言葉、風俗、習慣が違う人々の世界を実感し、その時代を楽しむ気持ち(平安時代への旅に出る気分)で聴いていただければありがたいと思います。
学校で一般的に学ぶ『紫式部日記』とは違い、分かりにくいところは他の資料を用いたりして多面的に分かり易く解説していきます。

  受講者のコメント

現在『源氏物語』を受講していますが、より理解を深め楽しむためにこの講座も受講しました。
『源氏物語』はフィクションで、その時代や物語の背景をもっと知りたいと思い受講しています。
この日記をはじめ紫式部の作品は日本文化の原点だと思ってきました。知らないと日本人としてのアイデンティティーが失われるように思い、この学習の機会を待っていました。
この講座を受講して、現代に生きる私たちと1000年前の人たちとの考えは変っていないことが分かり、紫式部を身近に感じるとともに感動もしました。
先生のお話がとても楽しく受講してよかったと思います。
別の講座で『枕草子』を受講し、平安文学に興味を持ったのがきっかけで受講しました。この作品に述べられている「みやび」の世界に癒されています。

  取材アシスタントの一言

古文の世界は難しいものと思い込んでおりましたが、今日の講義を聴き、講座で直接聴くことの良さを改めて実感しました。
○紫式部の名は知っているものの縁遠いものでした。取材を前に数冊の関係書籍を手にとってみると問題発生です。文章は難しくないのですが、辞書にも出ていない言葉にお手上げの状態でした。先生は「自分ひとりで読むのは無理ですよ」と優雅に言っていただいたことで癒され緊張がほぐれる思いでした。