「きらめき」教養講座案内 |
『古今和歌集』を読む 〜古典文学の世界の美しさと広さを〜 |
角田 宏子 氏(開明中学校講師:文学博士) |
『古今和歌集』について よく受けるご質問から。「『古今和歌集』と『古今集』は、同じものなのですか」という質問をよく受けます。これは同じものです。 また、『新古今和歌集』(『新古今集』)というよく似た名前の歌集との関係については、両者は全く別のものです。名前が示す通り『新古今集』は、『古今集』が多分に意識されていますが、『新古今集』は、作られた時代が『古今集』よりも三〇〇年ほど後です。 『古今和歌集』は、平安時代の初め(延喜五年=九〇五年)、醍醐天皇の命により作られた歌集で、約1100首の歌が収められています。天皇の命によって編纂(へんさん)された、つまり「勅撰(ちょくせん)」の歌集であり、勅撰和歌集としては最も古いものです。 1100首の歌は、二十巻に分けられ、春夏秋冬の四季の歌から、離別、羈旅(たび)、物名、恋、哀傷、雑、雑体、大歌所御歌の部立で構成されています。歌の配列は緊密で、十分な配慮がなされており、流れるような展開になっています。 それぞれの歌は、「日本文明のきめのこまかさ」(吉川幸次郎氏『古典について』)の所産であり、後世への影響は、文学作品にとどまらず、美術工芸作品や我々の美的感性にも及んでいます。 講座について(講師のコメント) 平成17年が『古今和歌集』撰集の1100年に当たるということで、この講座の開講が計画され、翌18年から講座担当を始めました。 一年間で全体を見て頂き完結するという方針で、毎回十数首を選び出して読み進め、ほぼ同じ内容を二年間行いました。 テキストには、現在刊行されている現代語注釈の施された『古今和歌集』の中から七種類を受講生の皆さんへのご紹介を兼ねて使用しました。 受講生の方々の受講の動機や講座のあり方に対する期待は様々で、出来るだけ多くの受講生の方々にご満足いただけるためにはどうすればよいか、この二年間で考え、試行錯誤しておりましたが、今年度も担当することになり、方針を変えてみることにしました。 平成20年度から、江戸時代の注釈書である『古今和歌集正義』(写真参照)を基本にしながらに、少しずつ鑑賞していきます。総論から読み始め、仮名序、続いて和歌に入ります。何より、言葉が紡ぎ(つむぎ)出す世界の美しさと広さ、古典文学の大きさとを味わっていただきたいと思っています。 ある日の講座風景 取材日は講座の最終日に当たる2月23日でした。最終章である「巻二十」を教材にこの巻の構成と意義、背景に加え文法解釈がなされていました。この講義によって受講生の多用なニーズ応えておられました。 受講者のコメント ・日本を知るために10年以上をかけて古典を学び、シルクロードも訪れるなどしています。 ・古典が好きで学んでいます。 ・この講座では「古今和歌集」の世界を広い角度から学ばせてもらえるので楽しんでいます。 取材アシスタントの一言 ・「古今和歌集」が時代の変化を乗り越えて1100年も愛されてきた要因の一端に触れた感じをもちました。 ・日本語(やまとことば)の美しさ、力強さを代表する作品であり現代に与えた影響も大きいことを改めて感じました ・多様な人生を歩んだ来られた受講生にのニーズに応えようと努力されている講師の真摯なお姿を拝見しました。 |