皆さんは『万葉集』のことをどれくらい知っていますか。『万葉集』には遠い昔の風景や季節、人々の 思いなどが歌で綴られています。現在、日本のあちこちに「万葉植物園」が造られていたり、「万葉の旅」 などと称する旅行が催されたりしています。そこで、生涯学習センターきらめき講座の「もっと楽しく万葉集」を 担当されている影山尚之先生に、『万葉集』の歌やその魅力について語っていただきました。 |
650年代から750年代のおよそ100年間の歌が集められた日本に残る最古の和歌集です。奈良時代の後半(770年から780年頃)に成立しました。4,500首以上、全20巻から成り、天皇や貴族、地方の役人など、いろいろな立場の人の歌が収められています。しかし、圧倒的に中流以上の人の歌が多く、その中心は宮廷の人々です。編集は全巻同時期ではなく長期にわたっており、最終的にまとめた のが大伴家持ではないかと言われています。大伴家持の家はもともと、天皇の身辺を警護する武門の家柄でしたが、壬申の乱(672年)以後、律令制度が整い安定した社会が続いたことや藤原氏の台頭などで政界の最前線に出にくくなりました。8世紀に入ってから、大伴家は、和歌などの文化的な技芸に力を発揮するようになりました。 『万葉集』は内容から分類すると、雑歌、相聞、挽歌に分かれます。雑歌とは、くさぐさの歌ということですが、宮廷の儀式や旅、自然などが詠まれています。相聞とは主に男女の恋を詠んでいる歌のことで、全体の約4割を占めています。挽歌とは人の死を悲しむ歌です。挽歌の数は多くはありません。
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