茨木には自然歩道として、竜王山・武士・山脈・鉢伏・北山・キリシタンの6コースと東海自然歩道を組み合わせたコースなどがあります。
そこで、まなびどり探検隊はこれらの歩道を実際に歩いて、四季折々の自然をシリーズでお届けしています。今回は秋に取材した武士自然歩道と東海自然歩道の一部を紹介します。




 このコースは桑原橋バス停から阿武山、竜仙の滝へと北に向かうコースの紹介が一般的なようですが、私たちはゆっくり自然に触れることとバスの利便性を考えて、逆に竜仙峡から南に向かって尾根道を歩いてみました。
 阪急茨木市駅午前9時53分発の車作行バスに乗車して、午前10時30分ごろに車作バス停に到着しました。

 

  車作バス停から北へ、車作クラブ前を通りバス道から分かれて、なだらかな上り道を少し行くと、左側に皇大神宮の階段が見える。階段の手前に畑中権内の顕彰碑と権内水路取水口復元模型が置かれている。集落を抜けてさらに行くと安威川に架かる車作大橋に着く。ここまで約25分。武士自然歩道のスタート地点である竜仙峡バス停から竜仙の滝の入り口まで約10分。ダンプカーや大型車が多い府道を右側一列になって歩く。はみ出さないよう要注意!右に折れて小さな渓流沿いを上り、左右に渡りながら大きな岩を越えると、目の前に落差13mの見事な竜仙の滝が見える。わずか10分たらずの上り道で、車道の騒々しさが嘘のような世界である。


竜仙の滝


 小休止の後、滝を回るように上り、急坂を過ぎる。うっそうとした杉林の中を15分ほど上って鋭角に右に曲がるが、直進すると萩谷を通って摂津峡へ行く。この分岐には山歩きの愛好家が掲げた竜仙峠の標識があるのみ。要注意!頭上に高圧線が見えるがそれも目印になる。ここからが「明智街道」で、戦国時代に明智光秀が早くから畿内作戦のために、近江坂本から愛宕山の麓を経て(いわゆる明智越え)亀岡に至り、さらに摂津への尾根筋を南下して通るおよそ50km、幅約1.5m〜2mの軍用路として整備したものといわれている。
 ナラやクヌギの古木が生い茂る木陰の涼しい尾根道を南へ歩く。現在の山道はどう見ても1m〜1.5mほどで、変電所へ向かっての下り道には2カ所のクサリ場もあって、この道幅では騎馬を含む大軍団がとても通れるとは思えない。約3kmを50分ほどで歩き、車道に出ると関西電力の変電所が見える。分岐点に「左 車作 右 萩谷」の古い道標が立っている。しばらく車道を歩くと変電所の正面前に着く。ここが阿武山への分岐点である。山頂へはなだらかだが、工事の車が使うのか、ほこりっぽい道が続く。1kmほど行くとまた山道にさしかかり、ここで遅めの昼食をとる。小休止の後、1km足らずを歩き、自然歩道から左折して少し行くと阿武山山頂である。


武士自然歩道の道標

 

 阿武山(美人山)は海抜281m。山頂は「休場(やすんば)」と呼ばれ、「相場の旗振り場」であったようだ。現在は雑木が生え茂っているが、かつては高い樹木がなくツツジのみが生えて景色の良いところであった。大正の初期まで、ここで大阪の米相場など商都の情報を、京都へ向かって旗を振って知らせた中継所であったらしい。
 山頂からコースに戻るとすぐ近くに、貴人の墓(阿武山古墳)がある。昭和9年に漆塗りの棺に入って、ガラス玉の枕をして絹の冠をかぶり、金糸をちりばめた錦の衣服をまとった人骨が出土した。60歳くらいの男子のもので、この地方を拠点とした豪族、中臣氏つまり藤原鎌足のものではないかといわれているが、決定的なものではない。
 自然林の中を進むと、朱色の大鳥居に出合う。稲荷神社の鳥居である。さらに急な山腹を下って約30分でバス道に出る。車道の一段上にも道があり、そちらを右にたどって行くと、桑原橋バス停へ到着する。


阿武山山頂

貴人の墓(阿武山古墳)

 

 この自然歩道は全長約8kmですが、今回はバスの便の関係で、車作バス停から竜仙峡バス停までの約1.5kmを加えて、合計10km弱を歩きました。
 寄り道の時間も入れて、4時間半、尾根道で木陰が多く、歴史に思いをはせながら歩く楽しいコースでした。
※このコースでは、最も交通の便がよいのは、阪急バス阪急茨木市駅発竜仙峡行(JR茨木駅へは行きません)ですが、日・祝日の午前9時30分発1本です。平日、土曜日はありません。

  担当:阿曽 岩本 河村 野間 藤原 絵:藤原   



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