茨木には自然歩道として、竜王山・武士・山脈・鉢伏・北山・キリシタンの6コースと東海自然歩道を組み合わせたコースなどがあります。
 まなびどり探検隊はこれらの歩道を実際に歩いて、四季折々の自然をシリーズでお届けしています。 今回は春に取材した北山自然歩道を紹介します。

さわやかな雑木林とのどかな集落を歩く北山自然歩道

 今回のコースは、バスの利便性もあって市のマニュアルとは反対のコースで、長谷口バス停から狩待峠、権内水路(深山水路)を通り、車作大橋までの約5.4qに加えて、忍頂寺バス停から長谷口バス停までと、車作大橋から車作バス停までの合計約8qを歩くことにしました。市の北端で高い所に位置するこのコースは史跡めぐりではなく、豊かな自然と懐かしい集落のたたずまいに触れることができる自然歩道で、ゆっくりと山歩きを楽しみました。


 阪急茨木市駅午前8時55分発の忍頂寺行バスに乗車し、午前9時50分に忍頂寺に到着。長谷口バス停に向かって車道を避け山すそを歩く。いくらも行かない所の山肌から、タケノコが頭をのぞかせている。人影のない澄み切った空気を思う存分吸い込む。ウグイスの声は艶やかで春の盛りを思わせ、新緑の木立は山歩きの楽しさを教えてくれる。なだらかな山道が途切れると雑木林に沿った農道にアジサイが100mほどにわたって植えられている。6月頃には大輪の花を咲かせるのだろう。 長谷口バス停近くのde愛・ほっこり「見山の郷」は一昨年にオープンし、品質の良さと新鮮さが評判となり、近郷近在から多くの人が訪れるとか。当日はあいにくの休日で、立ち寄ることはできなかった。


長谷口バス停近くにある案内板
(バックは見山の郷)


 バス停前の集落入り口を上ると、長谷地区の配置図と北山自然歩道の標識がある。長谷コミュニティーセンターの前を通り、集落の終わった所をしばらく歩き、なだらかな上りを谷沿いに峠へ向かう。道の両側には、スミレ、タンポポ、オオイヌノフグリ、シロツメクサがいたるところに群生し、行くほどにムラサキケマン、キケマン、カラスノエンドウ、ハハコグサなどの野草を見ることができる。植物図鑑を片手に山野草を探して歩くのには絶好の場所だ。 道の傍らに小さな道祖神を見つけて足を止める。道祖神は路傍にあって、疫病や悪霊を防ぎ、旅人の安全を守ると伝えられている。ヤマザクラをいたわるように吹く風は探検隊にもやさしく、30分ほどで狩待峠に着いた。このあたりが茨木市の中でも高い所で、眺めは最高。フェンスを隔てた向こう側は亀岡市だ。たまたま犬を連れて散歩にきた亀岡市の人としばし歓談する。山あいの田んぼはすでに水が入り、田植えを待つばかり。早苗が育ち青田が風にたなびく頃は、美しい緑の棚田を眺めることができそうだ。


北山自然歩道の道標


 峠を下りた所に素盞嗚尊神社がある。うっそうとした小さな社で、かすかな木々のざわめきがあるだけだ。境内をぬけて急な山道を下りると清阪集落に入る。入り口には道祖神が祭られ、小さい花立てに野の花が供えられている。春の日が民家の白壁に反射してまぶしい。どの家も色とりどりの花を咲かせ見飽きることがない。エニシダ・レンギョウの黄、ユキヤナギの白、シバザクラの赤、パンジーの紫などが色を競っている。集落はサクラが満開でほとんどがヤエザクラだ。日当たりのいい斜面に、ツクシ、ワラビ、ゼンマイ、ノビルなどが茎を伸ばし、風になびく姿を見ながら春の日永を楽しむのもいい。 集落には「右 あなう(穴太寺) 左 そうじ(総持寺)」 や「右 阿な(奈)を寺(穴太寺) 左 そうじじ(総持寺)」と読める石の道標がある。道のところどころにある道祖神やこの石標が西国巡礼の古道を物語っている。道を下ると清阪浄水場がある。道を隔てた向かいにはサクラの木が見事な花をつけている。この木の下で昼食をとる。休憩後、権内水路へと向かう。


のどかな風景が広がる清阪集落


 清阪集落の出口の車道を右に行き、すぐ左の谷へ下りる。この道は舗装された道とは違い、堆積した落ち葉が足裏にやさしい。 権内水路(深山水路)は宝永年間(18世紀初)に車作の庄屋であった畑中権内が、車作一帯の農作物のために独力で掘り開いた水路と伝えられている。畑中権内の遺徳をしのび、皇大神宮の階段の手前には、顕彰碑と権内水路の取水口復元模型が設置されている。
 山道を下りた所は分岐点で、北山自然歩道と竜王山自然歩道の道標がある。左の道を約1qほど歩き、最後の坂道を越えると車作大橋に出る。車作集落を通り車作バス停に着く。


権内水路(深山水路)



 権内水路への道を間違えて、豊中亀岡線を清阪峠付近まで歩き、元の地点へ引き返したので、合計約10qを歩いたことになりますが、体力と気力で克服し思い出深いハイキングになりました。

担当:阿曽 金原 西村 野間 絵:金原