市民インタビュー

 茨木市民の中からいきいき生活の達人を探し出し、紹介するコーナーです。話から見えてくるその豊かな人生に、きっとあなたも勇気づけられることでしょう。

 車作地区の人たちは、昔盛んだった炭焼きを復活させ、「ゴンゴンファクトリー」という炭焼き施設を造りました。宇山保士さんはその中のひとりで、炭焼きを通して豊かな自然を知ってもらおうと、訪れる人たちに炭焼きの指導などをしています。
 宇山さんが語る車作地区の自然と炭焼きへの思いとは・・・・。
炭焼きをするきっかけは何ですか。
 車作地区は、もともと炭焼きが盛んな所でしたが、だんだんと衰退し、昭和40年(1965年)頃にはほとんど見かけられなくなりました。安威川ダムの建設で、地区の一部が水没することになり、何かを残しておきたいとみんなで考えた結果、昔盛んだった炭焼きを復活させようということになりました。地区の人はもちろん、ボランティアの人たちも含めて延べ200人がおよそ2カ月かけて、平成12年(2000年)春、炭焼き施設「ゴンゴンファクトリー」を造りました。

「ゴンゴンファクトリー」という名前の由来を教えてください。
 地区の人たちにこの施設の名前を募集したところ、若い人のアイディアで、車作の権内水路(深山水路)を造った畑中権内の権と、車作の「作(造)」をとって「ゴンゴンファクトリー」という楽しい名前が付きました。

炭の材料は何ですか。また出来上がるまでにどのくらいの時間がかかるのですか。
 材料は、主にクヌギとカシです。1回で約200kgの炭ができます。窯の温度は850℃くらいでしょうか。炭焼きの手順はまず、窯の中に炭材を立てて入れ、火を付けて10時間ほどたきます。次に、下方の通風口だけを残してふたをし、炭材の炭化が終わったら、窯を密閉します。窯の中の火が消え、窯は次第に冷えてきます。冷えたところで窯口を開き中の炭を取り出します。ここまでおよそ1週間から10日間かかります。
 炭は、毎回出来が違います。タイミングが難しいのです。早く出すと、半分はまだ木のままだったり、遅いと灰になっていたりします。窯を開ける時はいつもながらどきどきします。

炭焼きをして良かったと思うことは何ですか。
 思い通りの炭ができた時はうれしいですね。それよりもうれしいのは、多くの人たちとの交流です。正直、炭焼きはしんどいです。けれどみなさんに喜んでもらい、いっしょに楽しく過ごしていると、その思いも消えてしまいます。

環境保全のために心掛けておられることは何ですか。
 むやみに木を切らないことです。常に景観や保全など山全体のことを考えています。木が密集している所では木がよく育つように、残しておく木と間引く木とを見極めて切っています。大阪府などの協力で、ほかの地域で伐採した木を譲ってもらい使用するということもしています。また、専門家の意見を聞いて、珍しい木の保存にも努めています。

今後の抱負を聞かせてください。
 炭焼き窯のある所は、深い山の中というイメージがありますが、ここは市街地から近い所にあり、すぐ横に安威川の支流である下音羽川が流れています。この川は人の手が加わらず、水が澄んでいます。この地区の「ほんまもんの自然」をもっと多くの人に知ってもらいたいです。そのためにもここに住んで、炭焼きを続けていきたいと思っています。ここが山と街を結ぶ憩いの場となり、環境を考える場となればうれしいです。それが私の役目だと思っています。

宇山さんにとって「生涯学習」とは何ですか。
 車作の伝統である炭焼きを通して、自然を楽しむことです。そしてこの豊かな自然を多くの人に発信することが私の「生涯学習」だと考えています。


担当:阿曽 西村 林田