東海自然歩道は、大阪の「明治の森箕面国定公園」から東京の「明治の森高尾国定公園」まで、総延長1,370kmにおよぶ緑豊かな歩道です。茨木市を通る東海自然歩道は、北摂霊園から忍頂寺を通り車作までの約18.3kmです。
 今回は、7月中旬に行程の後半部分を取材しました。忍頂寺バス停から車作大橋まで、そこからさらに高槻市の萩谷総合公園までを加えて、合計約10kmを歩きました。

 忍頂寺バス停を右方向に少し行くと、左側に石の鳥居と急な階段がある。ここが竜王山山頂への登り口であり、忍頂寺(寿命院)への参道でもある。真新しい案内板のそばの石仏に一日の無事を祈る。石段の幅が一定していて、思いのほか歩きやすい。道の両側の木々がうっそうと茂り、夏の山を実感する。万緑を押し広げるようにゆっくり歩いていくと道が三差路になる。それぞれの道には道標があった。木の間隠れに見える市街地を眼下に、なだらかな坂を上ると左側に山肌から露出した岩がある。形が蛙に似ていることから「蛙岩」と名付けられている。さらに進むと岩刀山の碑があり、昔、岩の割れ目から薬師如来が現れたと言われ、竜王山七坂七不思議の一つと伝えられている。あたりはうっそうとしていて、竜神にまつわる石碑や石仏が点在している。宝池寺の清水で一息つき、愛宕権現を過ぎてゆるいカーブを右側に行くと、道が急に狭くなった。夏落葉が積った山の中をしばらく歩くと突然視界が開け、竜王山の頂上に到着。山頂の展望台には、大勢のハイカーが集まっていた。

(10:50)

「蛙岩」
竜王山山頂への道


 山頂から下る長い階段は、整備がされていて歩きやすい。足元に気を配りながら歩を進める。倒木の下からキノコが白い傘を広げ、茎の伸びたワラビやヘビイチゴの赤が目を楽しませてくれる。0.7kmほどの道を30分かけて下ると、安元・板谷配水池前に出た。林道車作忍頂寺線を下り、清水廃寺、経塚に立ち寄る。青田に囲まれた車作集落は目を見張るばかりに美しい。昔、この地では良質のケヤキ材が産出され、天智天皇の代に御所車を造って御所に献上したと伝えられており、このことが車作の地名になったようだと案内板に書かれていた。
 案内板を後にしばらく歩くと車作大橋に到着した。この付近は安威川上流にあたり、竜仙峡もある。ここで昼食を取る。

(12:15)

車作集落

 車作大橋を渡ると林道の入り口で、案内板のそばに早くもハギの花が咲いていた。集落を右側に見ながらだらだらとした坂を上っていく。両側はサクラとモミジの木立で木漏れ日が美しい。この辺りは、地元やボランティアの人たちによって植樹と手入れが行われている所である。サクラやモミジの頃に思いをはせながら歩いていると、突然ウグイスが鳴いた。「老鶯」(春を過ぎて鳴くウグイス)である。崖の上にはアジサイが咲き残り、岩清水の音が聞こえる。「マムシ、ヘビ、スズメバチに注意」の立て札を気にしながら一歩踏み込むと、山の冷気が全身を包む。この奥はキツネノカミソリの群生地だが、残念ながら見ることはできなかった。しばらく歩くときれいな杉木立が見える。木立を抜けて最後の上り坂を一気に歩くと武士自然歩道に出る。あと少しで高槻市だ。
 雨に降られることもなく、萩谷総合公園に到着した。

(14:40)

東海自然歩道の道標

自然歩道沿いの杉木立

 
 
 
 
 取材をしたのは7月中旬で、梅雨明けを待ちかねた多くのハイカーたちに出会いました。中には本格的な夏山登山の練習に来たという夫婦もいて、汗まみれの明るい笑顔からたくさんの元気をもらった一日でした。  
 
 
 
 
 
 
 
 


担当:阿曽 西村 野間 林田 宮崎
 絵・俳句:阿曽