生涯学習センター きらめき講座
生き物不思議発見−春夏編−

身近な植物と動物(昆虫)の「不思議な関係」について聞かせてください。

 タンポポやヒガンバナの茎から出る白い液やホウレンソウのあく、シソやネギやハーブの香りなどは、実は昆虫の食害を防ぐためのものです。ワサビやタマネギも、擦ったり切ったりすると辛くなるのは、細胞が壊れることによって辛味の成分が強くなるからです。昆虫に食べられた傷口付近で辛味を増して昆虫を撃退するという、高等戦術なのです。
 一方、昆虫の側はなにもしないのかというと、対抗策を立てています。ウマノスズクサという植物は昆虫対策の毒をもっていますが、ジャコウアゲハの幼虫はその毒が効かない体質を作り、その毒を体内に貯えて幼虫を食べる鳥に一矢報いる作戦に出るのです。さらに体にマークを付け、鳥に警告のサインまで送っているのです。


植物と動物(昆虫)がお互いに助け合う関係(共生)を結んでいるようなものはありますか。

 花粉の運び屋としての昆虫と友好的な契約を結んでいる植物もたくさんあります。レンゲの雄しべを包んでいるカバーはミツバチによってのみ開かれるし、ツツジやユリの花の蜜はチョウ専用で、その長い口で吸う間に羽に花粉が付くというしくみです。
  これらの植物と昆虫の関係は一億年の歴史の中で出来上がったもので、自然界の不思議に改めて感心させられます。
 移動することができない植物は、動物との敵対関係、あるいは友好関係を結びながら生活をしています。そのために、植物はホルモンを出すなど多種多様の化学物質を作り、自分の身を守っているのです。

最近、植物の世界でも外来種のことがよく話題になりますが、在来種と外来種の「不思議なお話」を聞かせてください。

 最近、タンポポの世界に異変が起こっています。古来日本に分布していた在来種のタンポポ(カンサイタンポポなど)の世界に、外来種であるセイヨウタンポポが侵入してきたのです。このセイヨウタンポポの繁殖力は強く、花粉がなくても雌しべだけで種を作ることができますし、また年に何回も花を咲かせます。セイヨウタンポポの広がりとともに、注目したいのがセイヨウタンポポと在来種のタンポポとの雑種で、それがどんどん広がっているのです。
 家の周りのタンポポがはたして何者(どのような種類)なのか観察してみるのも楽しいですよ。見分け方は、花を包んでいる緑の総包外片が下向きにそり返っているのがセイヨウタンポポで、そり返らず花の根元を包んでいるのが在来種のタンポポです。その中間で横に広がっているのが、在来種とセイヨウタンポポの雑種といえます。


左:カンサイタンポポ 右:セイヨウタンポポ

「生き物不思議発見」の学習を通して受講生の皆さんに伝えたいメッセージをお願いします。

 本講座では、動植物の生きる姿や自然のしくみを垣間見ることによって、自然に対する新たな知的好奇心をもっていただくことをねらいにしています。次回が楽しみになるような講座、学んだことを誰かにしゃべりたくなるような講座、そして、自分でもう少し調べたくなるような講座を目標にして、受講生の皆さんといっしょに楽しんでいます。人間も自然の一部だという考え方を持つことで、私たちの精神生活はもっと豊かになるでしょう。