第21回

 私は茨木の北に位置する山の上の街、山手台に住んでいる。
 生涯学習センターの講座や公民館活動をするため毎日のように「行きはよいよい帰りはこわい」の坂道を自転車で下っている。
 帰路は登り坂の難所が三か所ある。二か所は自転車で登りきったが、長い距離の一か所がどうしても登りきれない。
「バスに乗れば」と、家族も友もあきれ顔ではあるが、往復七百二十円は主婦にとっておおきな支出である。
 それに、バスに乗っていては、風をきって走るあの爽快感を味わうことができない。安威川に遊ぶ鳥たちにも出合えない。
 季節が来ると安威の田んぼに水が入り苗が移される。少しすると「ヴォーヴォー」と鳴く牛蛙の低い声が聞こえてくる。真夏には、育った稲の草いきれが鼻を突く。そんなことが体感できなくなる。
 いつまで走り続けられるか分からないが、移りゆく季節を感じながら懲りもせず、今日も自転車で山道を下る。

岡田 澄江