春が近づくと、あちこちで野草が顔を出し始めます。野や山ではさまざまな野草が花を咲かせ、“小さな春”を感じさせてくれます。     
茨木市を流れる安威川では、どのような野草が見られるのでしょうか。茨木市環境教育ボランティアで、昨年、生涯学習センターで催された短期講座、「秋の植物に親しもう」の講師の皆さんに、2月中旬頃から4月頃に花を咲かせる野草のいくつかを紹介していただきました。

 

 まだ北風が川筋を吹き抜ける2月半ば、河原や堤防の日だまりに散りばめられたように咲く、空色で小さい花が目にとまります。この花はオオイヌノフグリで、俳句には、「星がまたたく如く」と詠まれています。西アジア原産で、明治時代に渡来しました。晩冬から春に移っていく季節の風情としてなじみ深い花です。
  この花と春の先駆けを競うように赤紫の花をつけるのが、
ホトケノザです。向き合う2枚の葉が接して1枚の円座のようになり、その上に花が輪状に咲きます。細長い筒の先端が唇の形をしていて、上下に開く花です。よく似た花のヒメオドリコソウとはシソ科の仲間で、隣り合って群れ咲いています。

オオイヌノフグリ
(ゴマノハグサ科)
ホトケノザ(シソ科)

 

 日差しがやわらかくなる3月下旬には、タンポポの黄色い花が河原を敷きつめていきます。近年は、各地で日本在来種のカンサイタンポポが減り、荒れ地に強く冬にも花を咲かせる外来種のセイヨウタンポポが増えていますが、安威川では両方の花が見られます。花の基部を包む緑色の細い葉のような総苞外片がそり返っているのが外来種です。 
  ツクシも顔を出してきます。スギナは胞子で増えるシダ植物。ツクシはその胞子茎で、普通の草の花と同じ役割を担います。栄養茎のスギナとは地下の根茎でつながっている同一の植物の別器官です。


カンサイタンポポ(キク科)

ツクシ(シダのトクサ科)

セイヨウタンポポ

 

 白い小さなハコベの花に目を向けましょう。花びらが10枚のように見えますが、5枚の花びらがそれぞれ深く2つに切れ込んでいるのでそのように見えるのです。ハコベは、春の七草の一つで、在来種のミドリハコベに、今は外来種のコハコベも加えた呼び名です。安威川にはコハコベが多く見られます。
  4月に入ると、
セイヨウカラシナの花が堤防を黄色に染め上げていきます。「菜の花」と呼ばれますが、「ナノハナ」という種名の植物はありません。アブラナ科アブラナ属の黄色い花の総称です。日本の春を象徴する花になっていますが、外来種で、セイヨウカラシナは戦後に広がりました。

ミドリハコベ(ナデシコ科)
セイヨウカラシナ
(アブラナ科)