生涯学習センター きらめき講座
こころの日本史

講義中の講師
 生涯学習センター きらめき講座の一つに、「こころの日本史」という講座があります。
 今回は、日本史を語る上でターニングポイント(転機)となる出来事について、担当の水谷慶一先生に話を聞きました。

 

講座のタイトルに「こころ」という言葉が付いていますが、先生のどのような思いが込められているのでしょうか。
 歴史は暗記物だと思っている人がいるかもしれませんが、そうではありません。歴史上の出来事をただ覚えるのではなく、その出来事の周辺や奥にある形に現れないものが理解されたとき、必ずやあなたの「こころ」に響いてくるものがあるはずです。それが歴史です。したがって、年表と出来事の羅列では決してないという意味で、「こころの日本史」というタイトルを付けました。

日本史を語る上でターニングポイント(転機)となる出来事を2、3挙げていただけますか。
 まず挙げられるのが、古代国家の成立から律令体制の成立までの過程ですね(7世紀中頃から8世紀前半)。
 日本は、それまでの村の集合体から統一国家へと移り変わり、北海道を除く3つの列島を国土として意識し、形成していきました。日本と中国、朝鮮との関係が国際的なものであることを日本の人々が認識し始めたのもこの頃です。その後、法律などさまざまな制度ができ、文学では、『古事記』『万葉集』などが作られました。
 二つ目は、平安時代末期から鎌倉時代にかけての大きなうねりです。社会の仕組みが貴族社会から武家社会へと移り変わり、武士が権力を持つようになったのです。武士というと戦争ばかりしているイメージがありますが、彼らは大地にしっかりと根ざしており、自分の土地に愛着を持っていました。この時代を代表する文学に『平家物語』があります。
 三つ目は、黒船来航に始まる幕末から明治維新にかけてです。日本が近代国家となるためのとても大きな出来事でした。日本を近代化するためには、ヨーロッパの進んだ文明や合理的なものの考え方を取り入れる必要がありました。福沢諭吉は67年の生涯を、半分を江戸時代、残りの半分を明治時代に生き、歴史の移り変わりをまざまざと見た人でした。今回は、その代表作『文明論之概略』からテキストを選びました。

このような歴史の流れに影響を与えた出来事は何でしょうか。
 統一国家を形成した直後の日本が最初に受けた試練が、白村江の戦い(663年)です。この戦いで、日本遠征軍は唐と新羅の連合軍に大敗します。それまで朝鮮半島に勢力を持っていた日本は、この敗戦をきっかけにその後の政策を国内統治へと大きく転換することになるのです。
 それから500年後、貴族社会から武家社会への移り変わりに大きく影響を及ぼしたのが源平の戦いです。この戦いに勝利した関東武士団は、政治の中心を京の都から関東の鎌倉へと移しました。
近代国家建設のきっかけとなったのが黒船来航です。日本はその後、開国、幕末の動乱、明治維新と、大きなうねりの中を新しい国家像を目指して進んでいきました。

講座を通して受講生に伝えたいことは何でしょうか。
 この講座には、会社を定年退職し、新たな気持ちで学習しようとしている方たちも受講されています。その方たちが、仕事を離れた環境で好きなことを学習することはとても大事なことです。そして社会をもう一度見つめ直し、感情に流されない客観的な「知性の目」「科学的な目」を養う手だてとして、日本史を学習することもその一つだと思います。この講座を通してぜひそれを見極めていただきたいと願っています。

講師の話を聞く受講生



演奏中の講師
生涯学習センター きらめき講座
JAZZ講座2
 生涯学習センター きらめき講座、「JAZZ講座 2」では、受講生がリズムに合わせて歌ったり楽器演奏をしたりして楽しんでいます。   
 そこで、担当の嶋本高之先生に、ジャズの歴史やジャズに親しむ方法などについて聞いてみました。

ジャズの歴史について簡単に教えてください。
 ジャズは、19世紀にアメリカの南部、ニューオーリンズで発祥したといわれています。
 奴隷制度が存在したその時代、ニューオーリンズは、北米における奴隷貿易の入り口の港として栄えていて、そこでは、ヨーロッパやアフリカの人々が混然となって暮らしていました。彼らはクレオールという独自の文化を持っていました。その文化がもととなり、ヨーロッパの音階とアフリカのリズムが融合してできたのがジャズとされています。
 時を経て、北部の重工業が盛んになるにつれ、経済の中心がシカゴ、ニューヨークへと移っていくと、ジャズの中心もニューヨークへと移り、その後、さまざまな変化を経て現在に至りました。
 
講座ではどのようなことをするのですか。 
 ジャズを身近に感じていただくために、実際に体を動かして歌ったり、リズムをとったり、楽器を演奏したりしてもらいます。歌の場合、日本ではカラオケ文化が人々に根付いているので、受講生の皆さんには比較的スムーズに歌っていただいていますが、気を付けることは発音とリズムです。英語で歌うときには言葉の繋がりや区切り方が難しいので、よりジャズらしい歌い方ができるように練習します。
 
 また、ジャズのリズムは2拍と4拍なので、それを自然に感じることができるようにしていきます。

ジャズに親しむ方法を教えてください。
 レストランなどで店内から流れてくる音楽にジャズが使われていることがありますが、それを意識していなくても、知らず知らずの間に曲のどこかのフレーズを覚えていたりするものです。このように何気なく聞いていたジャズを、今度は自発的にライブハウスやジャズを演奏しているレストランなどに行って生で聴いてみるのです。
 CDを聴くのもいいでしょう。トランペットでは、ルイ・アームストロング、マイルス・デーヴィス。ヴォーカルでは、サラ・ボーン、ビリー・ホリデー。ピアノでは、オスカー・ピーターソン、ビル・エヴァンス。日本の演奏家では、日野皓正や渡辺貞夫など。このほかにもまだまだ素晴らしい演奏家がいっぱいいます。また、ジャズを題材にした映画を見るのもいいでしょう。
私がニューヨークでジャズを勉強していた頃、まず驚いたのが、上手な人もそうでない人もいっしょになってジャズを楽しんでいることでした。そこでは、ジャズを歌ったり演奏したりするのは自己表現の一つで、上手でなくてもその中に自分の個性を見つけてそれを前面に出し、自分のスタイルは世界でただ一つのものと前向きに考えていることでした。
 基本的なことは大切ですが、あまりに人や形式を気にしすぎると、かえって自分の個性がなくなります。まず自分がジャズを心から楽しみましょう。そして、それを聴いてくれる人がジャズを好きになってくれればもっと楽しくなります。

リズムをとりながら歌う受講生