第26回

 「ネエ、ネエ、おじいちゃん。芋版したい」。下の孫娘にそう言われて、一緒に近所のスーパーマーケットへサツマイモを買いに行った。
 最近、駒なし自転車に乗れるようになり、自転車に乗りたがるのを無理に歩かせると、「じゃあ、カケッコしよう」と言って走り出した。途中、「どこで芋版習った?」と聞くと、「マンガ」という返事。
 いつも行くスーパーマーケットの野菜売り場で、サツマイモを三個買い、家に帰ると輪切りにした表面に大好きなコアラを描く。姉から借りた彫刻刀で彫り始めたが、うまくいかない。すぐに失敗したが、新しい表面に再びコアラを描く。そこで「あのねぇ、こっちから先に彫って、それから……」「わかった」。素早く反応を示すとまた彫り始めた。 
 出来上がって、インキを付け、慎重に真新しい紙に押してみたが、どうやら自分の思ったような出来栄えではないらしい。でも、幾つも幾つも同じ模様をペタペタ押して、白い紙にだんだん赤い模様が増えていく。やがて赤いコアラの模様でいっぱいになると、「焼き芋しよう!」「うん、食べる!」……。
 それからみんなで楽しいひととき。

     矢倉 正一