生涯学習センターきらめきでは、多くの市民の皆さんがさまざまな講座を受講し、楽しく学習しています。
今回は、初春にちなんだ4つの講座を紹介します。

生涯学習センター きらめき講座(教養講座)
陶 淵 明 の 世 界
陶淵明について簡単に教えてください。また、主な作品、その詩の特徴を教えてください。
 陶淵明(365〜427)は、中国の六朝時代の詩人です。字
(あざな)は元亮。一説には本名は潜、字は淵明だといわれています。
 若い頃は意気盛んで、29歳で江洲祭酒(学校行政をつかさどる長官)になりますが、官吏に馴れ染まず出仕と帰郷を繰り返し、41歳で辞職してからは、故郷で田畑を耕す生活を送ります。若い頃から世俗に合わせるという性格ではなく、有名な『帰去来の辞』は、最後の辞職のときに作られたものです。
 故郷の田園で自適の生活を送った彼の詩は、多くの人々に親しまれ、「古今隠逸
(いんいつ)詩人の宗」と評されています。
 主な作品は、『飲酒』と題する二十首、『桃花源記』『五柳先生伝』『帰園田居』などがあります。
講師の神楽岡先生
花を生ける受講生
 田園詩人と呼ばれる彼の詩 は、夏目漱石が『草枕』の中 で言っているように、超俗的で自然と融合した境地を詠っています。
講師の話を熱心に聞く受講生
花を生ける受講生
 私たちがよく知っている「悠然として南山を見る」は彼の『飲酒』の第五首に出てきます。詩の一部を紹介します。
 採菊東籬下  きくをとる とうりのもと
 悠然見南山  ゆうぜんとして なんざんをみる
 彼は性来、酒と自然を愛しました。官僚としての拘束を免れ、自己の好むところに従って故郷の田園に帰った彼は、自然の中で平穏に満ちた生活を送り、自己の理想の境地に生きました。

漢詩とはどのようなものなのでしょう。
 漢詩には、五言絶句とか七言律詩などがあります。絶句は四句で、律詩は八句です。また、五言とは一句が五字のもので、七字なら七言になります。
絶句、律詩は唐代に成立します。唐代以前は形式や規則が自由でした。これを古詩(古体詩)といいます。
 唐代以降に、絶句、律詩、排詩(十句以上)などの形式や規則が整理されました。これを近体詩といいます。なお、唐代以降にも古詩は作られています。

新春にふさわしい中国の漢詩などはありますか。
 新年や正月を詠ったものはほとんどありませんが、春を詠んだ詩はあります。なんといっても孟浩然の『春暁』でしょう。「春眠暁を覚えず」は、誰もが知っている詩句です。
 春眠不覚暁  しゅんみん あかつきをおぼえず
 処処聞啼鳥  しょしょ ていちょうをきく
 「桃の夭夭(ようよう)たる」で始まる『桃夭』(詩経)も春らしい詩です。
 桃之夭夭   もものようようたる
 灼灼其華   しゃくしゃくたるそのはな

漢詩はむずかしいと思われがちですが、初心者が漢詩に親しむにはどうしたらいいのでしょう。
 漢詩は決して難しいものではなく、案外、身近なものなのです。私たちの生活の中には漢詩の句がたくさん生かされています。面白くて笑いを誘うものもあります。そういうものの原典を図書館などへ行って調べてみると楽しくなります。そこから漢詩への興味を少しずつ深めていけばいいと思います。