教養講座の中からは、漢詩と日本の芸能についての講座を紹介します。
「陶淵明の世界」の神楽岡先生には、陶淵明の略伝や作品の特徴、また、漢詩に親しむ方法などを、「ビデオ鑑賞・日本の芸能」の相羽先生には、日本の芸能の起こりや鑑賞するときの楽しみ方などを聞いてみました。
ビデオ鑑賞・日本の芸能

芸能の起こりは何なのですか。
 すべての芸能は仏事、神事から生まれています。落語、講談、浪曲などは、もとは『今昔物語』などにあるような仏教の説話が源流です。落語はこんなことをしていると笑われますよというオチのある話から、講談は絵解き説教から、浪曲は琵琶で弾き語る節談説教から生まれました。歌舞伎や浄瑠璃などももとは仏事から生まれています。奇術や曲芸は神様に奉納する太神楽から生まれました。その後は、それを楽しむ大衆によって、さまざまな方向へと発展していきました。

歌舞伎、落語などの芸能で、新春にふさわしい出し物を
いくつか教えてください。

 芸能はかならず季節感のある題目を選びます。
 お正月には新春らしい縁起のよい出し物が上演されます。歌舞伎では、演目の一番最初に「寿三番叟
(ことぶきさんばそう)」が演じられることがあります。大阪では今でも、初詣でに行く前に初笑いに落語や漫才を聞きに行く人がいます。落語の定番ものでは「初天神」「厄払い」「げんげしゃ茶屋」などが、小咄(こばなし)では「正月丁稚(でっち)」などが演じられます。

伝統芸能を鑑賞するときの楽しみ方を教えてください。
 芸能とは、ただ単に見て楽しむことが本来の姿なのですが、現在では、多くの伝統芸能において予備知識なしに楽しく鑑賞することはむずかしくなってきています。歌舞伎や文楽などの伝統芸能には、きまりや約束事がありますから、それを知らずに鑑賞しても意味がわからず楽しむことができません。
 例えば、歌舞伎に「だんまり」という演出があります。これは、実際には舞台に照明はついていますが、設定は暗闇なのです。その中で無言の役者が音楽に合わせてゆっくりとした動きを披露します。この動きや話の流れを理解するには、この場面が暗闇だという約束事を知っておかなければなりません。
 このように、歌舞伎をはじめ能、狂言、文楽などには決まりや約束事があり、この美の世界を理解することが楽しむことの第一歩になるのです。
 このように、歌舞伎をはじめ能、狂言、文楽などには決まりや約束事があり、この美の世界を理解することが
楽しむことの第一歩になるのです。
講師の相羽先生
花を生ける受講生
講義を熱心に聞く受講生
花を生ける受講生
それには、鑑賞前にガイドブックを読むなどの予備知識を頭に入れておくことをお勧めします。
 これに対して、漫才などは予備知識がなくても劇場へ行けば誰もが楽しめます。これが伝統芸能と大衆芸能との大きな違いで、どれだけ人々の生活に近い所で息づいているかの違いでもあります。
 落語は大衆芸能から伝統芸能へと移行しつつあるとささやかれています。何の制約も持たない漫才とは違い、和服で座布団に座り、話の進行にもある程度の型を持った落語のスタイルが馴染みにくいという話も聞きます。しかし、実際に落語を聞いてみるととても面白く、噺家
(はなしか)の見事な話術に引き込まれていきます。噺家は「まくら」(演目の導入部分の小咄)で、客の笑いの層を見定めて、演目を決めます。
 最近、落語はドラマなどの影響で再び活気を帯びつつあります。大阪には落語専門の劇場もできました。落語が再び私たちの身近な存在になるでしょう。