第27回

 実に簡単なことで、人の運命は決まってしまう。
約三十年前、私は大阪府北東部の、ある小さな市に住んでいた。その頃、休日のパターンというのがあって、一週間分の食料の買い物に、ショッピングセンターへ車で行っていた。
 ある日も、いつものとおり妻と買い物に出た。人は気まぐれで、行き先に乗り気でないときがある。
 ふと、勤め先の知人が茨木市のサニータウン(山手台)に引っ越したことを思い出した。淀川を越えれば、現地までそれほどの距離でもない。どんなところか一度行ってみようと思った。
 現地に着くと、環境といい、眺めといい、住宅地の活気といい、一目で惚れ込んだ。で、その年の夏には、もうサニータウンへの引っ越しと相成った。
 私は生まれてこの方、八回引っ越しをしてきた。九回目が茨木市である。ちょっとした気まぐれの結果、この時以来、人生の半分近くを茨木市で暮らすことになった。ここがどうやら落ち着き場所であったらしい。
 もしあの時、ショッピングセンターの途中での気まぐれな思いつきがなかったら、今の自分は一体どこにいるのだろう。

渡辺 英治