生涯学習センター きらめき講座
源氏物語の世界7・紫式部日記を読むU
 生涯学習センターきらめき講座が、5月からスタートします。今回は、「源氏物語の世界7」と「紫式部日記を読むU」の講座を担当される岩井宏子先生に、紫式部の略伝や作品について、「国際事情と国内時事問題を掘り下げるA」の講座を担当される古谷浩先生には、国内外の出来事の読み解き方などを伺ってみました。

今年が『源氏物語』千年紀にあたるということで、各地でさまざまな催し物が開かれていますが、千年とは何を基準にしているのですか。
 『紫式部日記』寛弘5年(1008年)11月1日の記述に、「若紫」という言葉があり、それが『源氏物語』の「若紫」であるとされ、そこから数えて今年が千年紀になるということです。


紫式部についてお聞かせください。
 式部がいつ生まれたかは定かではありません。式部の家は藤原氏の流れを汲む家系で、受領階級(地方の役人)に属していました。父為時は学者であり、文章などを司る役人でもありました。また、東宮(皇太子)の文章に関する先生を務めたこともありました。紫式部という名前は通称で、「紫」は『源氏物語』から、「式部」は父親の役職名からとってそう呼ばれたと考えられています。
 式部には、姉と弟がいました。幼いときに、母と姉を亡くし、寂しい子ども時代を送ったということです。式部の家は父親の性格を反映し、地道な家風でした。式部が結婚したのが27歳の頃、夫藤原信孝は47歳の頃と推測されています。しかし、2年あまりで信孝は、式部と一女賢子を残し病没します。
 その後、式部は中宮彰子のもとへ出仕します。式部の仕事は、中宮の教養面での世話係でした。そこでの式部はかなりの待遇を受けていたようです。実家へ自由に帰ったり、『源氏物語』を執筆するにあたっての紙や筆なども楽に手に入れることが出来たようです。当時、紙は貴重品でした。あれだけの大作をまとめるには、相当な量の紙が必要です。それには中宮彰子の父であり権力の中心にいた藤原道長の力が大きく働いていたのではないでしょうか。
講師の岩井先生
講師の岩井先生
講義を熱心に聞く受講生
講義を熱心に聞く受講生

千年前とはどんな時代だったのですか。
 超格差時代でした。藤原氏の絶大な権力下に富が集中し、貴族は贅沢三昧の生活でした。また、貴族の中にも歴然とした身分差があり、どこの出身かが大きくものをいう時代でした。一方、民衆は生きていくのが精一杯でした。

 
『紫式部日記』とはどんな作品ですか。
 式部が中宮彰子の女房として仕えていた土御門
(つちみかど)邸(道長邸、中宮彰子の里)での出来事を中心に、行事などの描写、人物批評、さらには自分自身の回顧にも及んでいます。それは、日記とはいえ随筆のようでもあります。しかし、当時の貴族社会の様子がよくうかがえ、歴史的資料としても大変価値があるものです。

 
『源氏物語』のテーマは何であるとお思いですか。
 式部は、日々高貴な人々に接しその恩恵を少なからず受けながら、貴族社会の不合理さを心の底に持ち続けていたようです。物語では、身分制度、一夫多妻制度などに苦しむ人たちを軸に、さまざまな人間の生き方が語られ、幸福とは何なのかということが追求されています。


講座を通して受講生に伝えたいことは何ですか。
 古典文学は、長い年月を経て現代に残ったものですから、非常に意味のあるもの、含蓄のあるものです。物語などに描かれた生きざまや作者の考え方は、私たちの人生の良き相談相手にもなってくれます。
 受講されている皆さんには、知識を獲得するだけでなく、古典文学の世界に心を癒していただきたいと思っています。また、受講生同士で意見交換をすることで、講座を核に自分の世界を広げていただければと願っています。



国際事情と国内時事問題を掘り下げるA

今、地球温暖化が大きな問題となっています。この温暖化を「地球市民」の視点でどのように捉えたらいいのでしょう。
 地球温暖化は、まさにグローバルな問題として、近年急速に注目が集まっています。
 今年7月に予定されている洞爺湖サミットでは、この問題が中心テーマとして議論されるでしょう。日本がそこでイニシアティブをとれるかどうかも注目されています。 ドイツでは、二酸化炭素などの温室効果ガス低減のために、風力発電、太陽光発電などのクリーンエネルギー利用の研究が早くから始められており、この国は、自然エネルギー利用では世界をリードしています。
 自然エネルギー利用で遅れをとっている日本の課題として、日本の技術力を生かしてバイオマス(エネルギー源や原料として利用できる生物資源)を活用し推進していくことが挙げられます。
 それとともに、自分たちの身近なところから、地球環境に配慮する行動をするということが大切です。例えば、余分な物を買わない、水や電力などを無駄に使わないなど、できるだけ「つましい」生活への移行を図って、少しでも地球環境を改善しようと努力することが必要だと思います。


インドや中国などの経済成長には著しい勢いがあります。資源のない日本は今後どのような努力をすればいいのでしょう。
 少資源国の日本としては、これらの国々に対して、いっそう付加価値の高い製品の提供をするとともに、クリーンな環境作りのための省エネ技術や廃棄物処理技術を移転することなどが大切ではないでしょうか。


日本とアジア諸国との関係はますます大きくなっていきます。そこで、ASEANを含めたアジアでの今後の日本の役割についてお聞かせください。
 世界でも高いレベルを誇る日本の技術力、経済力、国民の消費の質の高さ(優れた品質のものを使う度合いが高いこと)などを、アジア諸国が価値ある指標とみて利用してくれるような関係を築くべきではないでしょうか。

 ASEAN加盟10か国は、「ASEAN経済共同体」構想を2020年までに実現させ、政治・安全保障はもちろん、経済、社会、文化の三分野で「EU(欧州連合)」と同じような組織を構築することで合意しています。しかし、経済基盤などの相違のために結成までにはいくつもの課題が残されています。

講師の古谷先生
講師の古谷先生
講義に聞き入る受講生
講義に聞き入る受講生


 さらには、「東アジア共同体」構想という16か国体制の立ち上げも現在模索されており、これには日本も含まれています。
 こうしたことから、日本はアジア諸国に対し、技術移転や投資を進めるなどして、一層の相互理解や友好関係を深めていく努力をすることが必要だと思います。


日々、多くの情報が私たちにもたらされます。その情報とうまく付き合うための方法を教えてください。
 現在では、従来から存在するマスメディアに加えて、パソコンを通しての膨大なインターネット情報がもたらされます。その情報量は日々膨れあがっています。ただ、情報の中には正確さに欠けるものや信憑性
(しんぴょうせい)に疑問のあるもの、あるいは恣意(しい)的な事柄(いじめ事件でみられるように)が含まれていることがあります。
 従って、私たちにもたらされる情報を単に鵜呑みにするのではなく、できる限り内容を調べて自分でよく考え吟味して利用することが必要なのではないでしょうか。