第29回

 寿命が延び、高齢化が進む昨今、認知症予防の本や広告を目にする機会が多くなった。その中で簡単なことの一つに黙読を音読に変えることで、脳が活性化し認知症の予防によいとか。
 そう言えば、声を出して本を読んだのは学校の国語の教科書ぐらいしかない。久しく声を出して読んだ記憶もない。
 それでは音読を始めてみるかと思い立ち、近くにあった新聞を読み始めてみた。声を出すのは独り言のようで何となく気恥ずかしい。
 何日か続けているうちに、黙読では気付かなかった私の読み方の曖昧さがわかってきた。音読することで漢字や文章のごまかしがきかず、電子辞書を開いてみたり、新聞を読み返したりするようになった。
 最近は、世界遺産のグラビア誌を引っ張り出し音読を始めた。以前とは違った面白さや発見がある。また、句読点に気を付け、言葉のつなぎを考えながら、チョット気取って朗読するように楽しんでいる。
 「忙中閑」。気ままな時に愉快な気分で声を出して読む。そんな事が認知症予防の一つになるのなら、何とも素敵な時間の過ごし方ではないだろうか。

摩嶋 佳江