『まなびどり』編集ボランティアは、これまでに茨木市内の街道や自然歩道、川などたくさんの自然や史跡を紹介してきました。
 今回は、茨木市の中心部を南北に走る元茨木川緑地を、周辺の史跡や神社などに寄りながらゆっくりと歩きました。
緑豊かな元茨木川緑地
緑豊かな元茨木川緑地

 元茨木川緑地はその名の通り元々は川でした。しかし雨が降るたびに洪水に悩まされることが多く、昭和12年から数年をかけて田中町近くで安威川と合流させる工事を行いました。昭和24年に下流は廃川になり、昭和50年から10年余りの年月をかけて整備・緑地化を行い現在に至っています。平成2年度には「大阪府緑の百選」にも選ばれ、市民の憩いの場になっています。

 7月2日晴れ。午前9時に生涯学習センターきらめきの玄関前に集合する。そこから「安威川茨木川合流の碑」がある地点まで歩く。合流の碑は元茨木川緑地の北端部にある。
 元茨木川緑地は全長約5kmで、桜や梅、楠、ハナミズキなど約40種類の樹木が植えられているそうだ。たくさんの木々が強い日差しから私たちを守ってくれる。歩き始めて約10分、田中橋跡の碑がある交差点に着いた。
 JR東海道本線の高架の下をくぐってUターンするように脇道に入ると、目の前にレンガで造った「田中の丸また」が見えた。明治9年、東海道線を設けた際にイギリスの鉄道技師が設計したという。煉瓦造りの優雅な形が印象的である。
 元の緑地に戻る。しばらく進むと上中条青少年センターと川端康成文学館が通りの向こうに見えてきた。目を緑地に戻すと、「佐介樋跡」と記された碑があった。佐介とは、千利休七哲の一人で、織部焼で有名な古田織部のことである。彼がこの辺りに屋敷を構えていて、その近くに取水する樋があったため、この名が付いたそうである。

佐介樋跡
佐介樋跡
茨木城の櫓門を模した
茨木小学校の正門
茨木城の櫓門を模した茨木小学校の正門

 「丹波橋跡」の碑を左に折れ緑地の外へ。道を何度か曲がり進むと、茨木城の跡に建てられた茨木小学校の正門に着いた。この正門は茨木城の櫓門を模してる。校名の表示には織部焼が使われている。
 茨木小学校から南へ下がった所に梅林寺がある。ここには、茨木城主であった中川清秀と弟の淵之助の墓がある。そこを出て茨木神社に入る。境内では夏祭りの準備が進められていた。茨木神社の南西端は高橋。ここから南が桜通りで北が川端通りである。


 元茨木川緑地に戻り南へ進んでいくと、ここにも橋跡があった。「寺町橋跡」と記されている。この交差点から、茨木高校の東門近くにある「茨木童子貌見橋」の碑へと向かう。
 案内板には、茨木童子が自分の姿を川面に映し、自分の顔が鬼の形相になっていたことを知って丹波の山奥に退いてしまったという民話の内容が記されている。
 緑地に戻る。ほどなく「柳の樋跡」に出合う。この樋は辺り一帯の水田のために役立てられていた本格的な樋だったそうだ。後に、茨木中学校(現在の茨木高校)の遊泳池(プール)にもこの樋から茨木川の水が引かれた。後に多くの水泳選手が生まれ、パリやアムステルダム、ロサンゼルスなどのオリンピックで活躍したそうだ。
 この後、「宮田の樋跡」「新庄橋跡」「水尾池樋跡」などの碑に出合う。中には本物ではないが、樋がこのようなものであったということがわかるように、実物大の大きさに再現しているものもある。

 さらに南へ進んで「あやめ橋跡」の前に立つ。この橋は小学校の通学のために昭和30年頃に造られた。「あやめ」は、当時の地名にちなんで付けられたということだ。ほかの橋と比べると新しいが、興味深いことは、茨木川は廃川になっても高い堤防があって、わずかな水の流れもあったということ。そのころはまだ昔の茨木川の面影が残っていたようだ。

柳の樋跡
柳の樋跡
水尾池樋を再現したもの
水尾池樋を再現したもの


 「あやめ橋跡」から南西の方向には、弥生時代の東奈良遺跡がある。ここから銅鐸の鋳型が発見された。
 あやめ橋交差点からさらに南へ歩いていくと、大きなモニュメントが立っている。近くには、「オリーブの森」がある。これは姉妹都市香川県内海町(現・小豆島町)から平成2年に送られたもので、緑地帯の中で異なった趣になっている。また、組み合わせた石の上から水が流れている小さな滝のようなものもあり涼しそうだった。
 その後、いくつかの樋跡や橋跡の前を通過した。このようにいくつもの跡を見ていくと、当時の人々が、あちこちで川や池の水を必要として樋から水を取り入れていたことが伺える。また、日常生活や農業などをするために橋を行き来していた当時の人々の姿も想像できた。
 横江の交差点を渡り沢良宜公園に入る。太鼓橋を通りしばらくして今回の行程を終了する。

 元茨木川緑地を歩いてみて、この周辺の人々と水との密接な関わりがよくわかった。茨木川は、水害で人々を苦しめたが、一方では、多くの人に水の恵みを与えた。そして現在は、緑豊かな場所に生まれ変わり、市民に安らぎを与えてくれている。

涼しげな水の風景
(組み合わせた石の上から水が流れている)