市民インタビュー
第36回
 茨木市民の中から「いきいき生活の達人」を探し出し、紹介するコーナーです。話から見えてくるその豊かな人生に、あなたもきっと勇気づけられることでしょう。

書道家・日本画家
まつ
ざん
さん
 書道家であり日本画家でもある松葉さんの作品には、現代社会が失いつつあるものが描かれています。作品のテーマは、地球の環境や昔の暮らしの中の一コマなどさまざまです。松葉さんに現在の活動や今後の目標などを伺いました。
制作される時、作品のイメージはどこから得られるのですか。
 私たちが社会の一員としてどう生きるべきか、自然とどう接するべきかということを考えると、そこには日常の暮らし方や自然との関わりに一定の基盤があることがわかります。その基盤をイメージして制作しています。日本の社会は、経済の発展に伴って生活がとても便利になりました。その一方で、失ってきたものもたくさんあるように思います。周囲への心づかいや季節を取り入れた暮らしなどは、いつの時代であってもなくしてはいけないものだと思います。そうした部分を絵にして表現しています。作品のメッセージは、楽しさと共にお届けできたらと願いつつ描いています。しかし、描いた絵については、これはこうだよというような説明はしていません。

絵画の道に進まれたきっかけは何だったのですか。
 私は、熊本県ののどかな田園地帯で育ちました。小さい時から絵が好きで、父親がいつも上手だと褒めてくれたことを覚えています。昭和20年代(1948年頃)に就職する時期を迎えたのですが、当時、希望する職業にも限りがありました。しかし、私は、何か自分を表現する仕事に就きたいという夢を捨て切れませんでした。そうした思いを持って、昭和30年(1955年)に大阪に来ました。
 昼は働き、夜は工業専門学校に通学しながら書道塾で書を学び、そこで興味を持ったのが象形文字でした。漢字の起源は調べてみると実に面白いのです。その後、原始美術壁画に出合い、歴史を感じさせない新鮮さに大きな驚きを持ったのを覚えています。何度見ても飽きることはなく、絵画の原点はここにあるのだと思いました。そこから、デザイン化された漢字や墨絵を描くようになりました。

現在、どのような活動をされていますか。
 昭和37年(1962年)に書道教室を開き、その後、市内の公民館で墨絵を教えてきました。それは今も続いています。また、現在、茨木市美術協会の副会長をしています。毎年、秋に開催される茨木市の美術展では、審査員を長年させていただき、市民の皆さんのすばらしい作品に接してきました。制作活動では、未だに墨絵や書道の厳しく困難な世界から逃げ出してしまいたい気持ちになることがあり、芸術の深さを痛感している昨今です。  

今後の目標を教えてください。
 来年は、再度渡米する予定です。平成12年(2000年)、エール大学を始め4つの大学で約2か月間、書道や墨絵に関する講義を行いました。その経験はとても貴重なものでした。異文化に触れてみて初めて日本の文化を見つめ直すことができました。素晴らしい先生方にも出会い、たくさんの友人もできました。
 このように、書や絵のおかげで世界各国を訪問し、各地で展覧会などに出品させていただいたことは、私の制作活動にとてもプラスになっています。

「知慧」


「四季の輝き」