世界の現状を伝えるパネルの展示
 JICA(独立行政法人国際協力機構)は、日本と発展途上国との架け橋となるべく、さまざまな支援活動を行っています。
 JICAはどのような国際協力をするところなのでしょうか。茨木市の西部、箕面市との境界近くにあるJICA大阪を訪ね、実際に現地で支援活動をされた経験がある二人の職員にお話を伺いました。
JICAとはどのような国際協力をしているところですか。
 
発展途上国には、貧困に起因するさまざまな問題に直面している国や地域があります。JICAはそれらの問題解決のために支援を行っています。支援は医療やインフラ(水、電気、交通などの社会・経済的基盤)、教育、農業、工業技術、パソコン技術など多岐にわたっています。
 JICAはそれらの技術や知識を必要としている国や地域に専門家やボランティアを派遣しています。現在、青年海外協力隊などのボランティア約37,000人がアジアや中南米、アフリカなどで支援活動を行っています。彼らは現地の人といっしょに道路整備や水道敷設、農業などに取り組んでいます。
 また、発展途上国の技術者や研究者を招いて研修をし、技術や知識を提供して、それぞれの国や地域の発展に活用してもらっています。これらの研修のために、自治体や大学、企業、研究所の協力をいただいています。さらに、その国の経済状況などに応じて、お金を融資したり援助をしたりしています。
 JICA大阪には毎年、100か国以上から約800人の研修員が訪れ、3週間から3か月間、日本の社会や経済についての勉強をしたり、関西地域の中小企業、工場、博物館などに行き、知識や技術を教わります。例えば、滋賀県では水の環境など、京都府や奈良県では文化財保護や街の景観・観光産業など、大阪府では企業のしくみや工業技術など、和歌山県では養殖技術などについて研修しています。また、ここから近い国立民族学博物館で展示方法などを学ぶ研修員もいます。


各国の民芸品や絵画の展示 研修員に合わせたレストランメニュー

現地での支援活動について教えてください。
 
 私たちは昨年まで現地に出向き支援活動を行ってきました。発展途上の国々のことは、本や映像などで知っているつもりでしたが、実際にその場に行って活動してみると問題の深刻さが肌で伝わってきます。私がJICAで国際協力の仕事をしようと思ったきっかけは、高校生の時に行った国で見た光景です。道路が整備されておらず町全体が埃っぽく、子どもたちが学校へも行かず道で物を売っていたりする姿を見て衝撃を受けたのです。自分が住んでいる世界とはまったく違う世界が目の前にありました。その時、自分にできることは何かを考えました。ホンジュラスでの2年間の活動では、何とか現地の方に溶け込み仲良くなりたい、信頼関係を築きたいと努力しました。信頼関係があってこそスムーズな支援活動ができるからです。
 JICA大阪には毎年、100か国以上から約800人の研修員が訪れ、3週間から3か月間、日本の社会や経済についての勉強をしたり、関西地域の中小企業、工場、博物館などに行き、知識や技術を教わります。例えば、滋賀県では水の環境など、京都府や奈良県では文化財保護や街の景観・観光産業など、大阪府では企業のしくみや工業技術など、和歌山県では養殖技術などについて研修しています。また、ここから近い国立民族学博物館で展示方法などを学ぶ研修員もいます。


研修員とJICA大阪近辺の方々との交流はあるのですか。
 毎年8月に夏祭りを催し、研修員や近隣の人々と楽しい一時を過ごします。そこでは日本の文化と研修員の国々との文化交流が行われています(盆踊り、民謡、民族ダンス、民族衣装、料理など)。また、みんながいっしょに楽しめるゲームなどもします。どなたでも参加できますので、ぜひお越しください。また、研修員は関西地域の小・中学校を訪問して交流を深めています。子どもたちも研修員も心から楽しんでいるようです。
   

 館内は研修員が和やかに過ごせるよう温かい雰囲気に包まれていました。図書資料室にはたくさんの国際協力関係の本や資料があり、世界各国の民芸品や写真などが展示されたコーナーや世界の現状を知ることができる企画展示もありました。レストランではさまざまな国の研修員に合わせて、エスニックなど多種多様の料理が用意され、世界の食文化を垣間見た思いがしました。
 館内の研修員に声をかけてみました。チュニジアから来られたこの方は、「もう3か月、ここで研修をしています。二酸化炭素を削減しクリーンな環境に整える技術を学んでいます」と、つたない英語での質問にもかかわらず、丁寧に答えていただきました。