『まなびどり』編集ボランティアは、これまでに茨木市内の街道や自然歩道、川などたくさんの自然や史跡を紹介してきました。
 今回は、茨木市の南部を中心に、約6キロの行程を、寺や神社に寄りながらゆっくり歩きました。
佐奈部神社の境内

 茨木市教育委員会発行の「わがまち茨木−神社・仏閣編」には、神社が約60、寺院が約95ほど掲載されています。茨木市の市街地にもかなりの数の社寺があります。
 今回は、茨木市の南部を中心に社寺を訪ね、庭の樹木や仏像、仏画などを拝見させていただきました。

 1月21日曇り。午後から雨が降るという予報の中、午前9時に阪急茨木市駅前に集合する。最初に訪ねる佐奈部神社に向かう。阪急茨木市駅東側の広い通りをまっすぐ南に歩く。この付近は車の交通量がかなり多い。800メートルほど行くと、東西に走る府道三島江茨木線に出る。その交差点の西北角に佐奈部神社がある。
 佐奈部神社は市街地にもかかわらず境内が広い。府道をまたいだ南側の鳥居から本殿まではかなりの距離がある。境内には茨木市の保存樹に指定されているクスノキの大木が茂っている。また、今ではめずらしい昔の農機具や日用品などを展示した資料館もある。なつかしい思いで見学させていただいた。
 佐奈部神社を出て弥勒堂に向かう。高瀬川の左側を南に下がり路地を左(東)に入る。弥勒堂の建物は小さく、案内板がなければ気付かない。かつて、この辺りは行基によって建てられた紫雲山西方浄土寺があったといわれている。浄土寺は七堂伽藍を有し、坊舎がいくつも建ち並ぶほどの隆盛をきわめていたらしい。しかし、今はその面影はない。この堂には弥勒菩薩像が安置されており、また、このお堂に伝わる釈迦涅槃図と十王図は、毎年3月15日に開帳されている。

 高瀬川の方向に戻り小橋を渡る。この川にはたくさんの大きな鯉が泳いでいるのだが、真冬のこの季節、どこかに引きこもっているのか姿が見えない。西の方向へと歩く。水尾公園の一つ手前の道を北へ進み勝光寺に着く。
 勝光寺は行基の開創、西方浄土寺の奥の院であったといわれている。梵鐘は宝永3年(1706年)に鋳造された。先の大戦で金属供出されたが、終戦後、四国で野ざらしになっていたのが発見され、無事このお寺に戻ってきたという。境内のエノキとクロガネモチは市の保存樹として指定されている。


勝光寺の鐘

佐奈部神社の農業資料館

 勝光寺を出てしばらく静かな住宅地を南下する。ほどなく東の方向に、マンションとクスノキの上部が見えてきた。伯光神社のクスノキである。市の保存樹木に指定されており、高さが約18メートル、幹回りは5メートルを超えている。案内板によると、天保5年(1834年)の干害の際に、この大樹にワラで作った竜を天に向かってはわせて、雨乞いをしたという。
 伯光神社を離れ、グリーンタウンに沿ってケヤキ並木を南下する。この並木道は、春は新緑、秋は紅葉が美しく、それは見事な光景である。残念ながら冬の季節は枝だけの寒そうな景色になっている。
 東西に通じる真砂の通りを過ぎてほどなく右に曲がると、西方寺の屋根が見えてきた。伯光神社から15分くらいのところである。お寺の門をくぐると、きれいな庭が目に入る。境内には紅梅の蕾が今にもほころびそうに膨らんでいる。蝋梅も今が盛りと咲き誇っている。お寺の方にお願いをして、本堂の阿弥陀如来像を見せていただいた。

お寺の方の話によると、戦時下、空襲で本堂が焼け崩れてしまったが、この阿弥陀如来像だけは蓮台の上に乗せられたまま救い出すことができたという。
 お昼の12時近くになったので、高瀬川を渡った辺りのお店で昼食をとる。
   

伯光神社のクスノキ

西方寺の紅梅

 昼食を終え東に向かう。若園運動広場のグラウンドや若園公園バラ園が見える。茨木東・北摂つばさ高校を通り過ぎ茨木寝屋川線に出る。道に沿って「花・水・木の小径」という遊歩道が設けられ、水路もある。暖かくなると花が咲き、散歩などを楽しむ人の憩いの歩道になるのだろう。ここを北に進む。府道三島江茨木線の交差点に出て東に進み、安威川の育英橋を渡る。寒々とした川面にはカモが群れ泳ぎ、そこだけが暖かそうだった。
 崇徳寺に着く。このお寺は、正保4年(1647年)、若狭守宮崎重成によって開創された由。釈迦牟尼仏を本尊にしている。牡丹のお寺として親しまれているようで、昔はたくさんの牡丹が咲いていたが、車の排気ガスなどで半減してしまったとのこと。残念である。
 崇徳寺の南を道路を挟んで少し下がると佛照寺がある。寺伝によると、弘長2年(1262年)に西順が創建したとのこと。西順は俗名を佐々木俊綱といい、感ずるところがあり高野山に入った。その後、親鸞の直弟子になり、この地に建立し、光明山佛照寺の号を賜ったという。現住職は27代目になる。蓮如上人から賜ったとされる「親鸞聖人、蓮如上人二尊連座御影」と題する秘蔵の仏画を拝見する幸運に恵まれた。

 午後2時、今にも雨が降りそうな空のもと、約6キロの行程を終え、佛照寺の側にある近鉄バス停前で解散した。 
なお、立ち寄った社寺は了承を得て、お話を伺った。
 午後2時30分、忍頂寺バス停に戻る。歩いた距離の割には見所の多い行程だった。

歩道に沿って造られた水路 佛照寺の
「親鸞聖人、蓮如上人
二尊連座御影」の仏画