『まなびどり』編集ボランティアは、これまでに茨木市内の街道や自然歩道、川などたくさんの自然や史跡を紹介してきました。
 今回は、平成15年(2003年)の秋に歩いた武士自然歩道を、若葉が輝く爽やかな季節に、再度歩いてみました。
車作大橋
  武士自然歩道は、桑原橋を起点として高槻市との境界を安威川沿いに進み、途中、阿武山を越えて明智街道を通り、竜仙の滝を抜け車作大橋までの全長約8キロ、約3時間の健脚向きコースです。今回は、山道での歩きやすさや帰りの
乗車バスのことなどを考えて、コースの終点に比較的近い車作バス停から桑原橋バス停を目指して歩いてみました。

  4月28日(水)、快晴。昨日の雨が嘘のように、雲一つない青空が広がる絶好のハイキング日和。阪急茨木市駅前から、午前9時10分発、車作行き阪急バスに乗車する。バスは満員である。午前9時41分、車作バス停で下車。最初の目的地である車作大橋に向かって出発する。
 なだらかな上り道を5分ほど歩くと、皇大神宮と法林寺に着く。広場には、深山(権内)水路を造った畑中権内遺功碑や権内水路取水口復元模型がある。
 車作集落の中を歩き、経塚碑や清水寺があったとされる場所辺りに立ち寄る。清水寺は建久6年(1195年)、京都の清水寺の分院として創建され、写経と縁結びの寺として繁盛したが、後に寺は焼失した。経典は近くに移され難を逃れた。その地に経塚碑が立っている。
 近くを流れる深山(権内)水路は、江戸時代(宝永年間)、車作の庄屋であった畑中権内が、農業用水に不自由をしている地域住民のために、20年の歳月をかけ苦労して造った水路である。30分ほど歩くと安威川に架かる車作大橋に出る。
ここは、国の東海自然歩道、茨木市の竜王山自然歩道、北山自然歩道、武士自然歩道が交わる所で、いずれも自然が豊かなハイキングコースである。
 府道茨木亀岡線のこの辺りは、通称ダンプ街道と言われるほど大型トラックがひっきりなしに通っている。安全歩行を心掛けて注意深く一列に並んで歩いた。

 竜仙の滝への案内板が見えた。せせらぎとウグイスの鳴き声を聞きながら坂道を上がっていく。しばらくして滝が見えてきた。高さ13メートルから落ちる滝の水は、勢いよく音をたてて落下していた。ここで少し休憩する。

経塚碑と子安地蔵
竜仙の滝

 竜仙の滝を後にして明智街道に向かう。杉林の中の坂道をゆっくりと上る。林を過ぎると雲一つない青空。きらきら光る若葉。聞こえてくるのは葉ずれとウグイスの鳴き声だけ。静かな世界を満喫しながら30分ほど歩くと竜仙峠と記された標識が見えた。高槻市の萩谷から摂津峡方面に向かう東海自然歩道とはここで分かれ、武士自然歩道に沿って歩く。鉄塔近くに見晴らしのよい広場があった。そこで昼食をとる。美しい景色の中で食べるお弁当はいつもの何倍も美味しかった。
 午後零時45分、休憩を終えて再び歩き始める。竜仙峠の標識辺りから阿武山にかけての道は明智街道と呼ばれている道の一部で、明智光秀が軍事作戦上、江州の坂本から京都の愛宕山、亀岡を経て、さらに摂丹の屋根筋を南下する約50キロの道を造った。武士自然歩道の名前の由来はここからきているのだろう。

 阿武山に向かってしばらく歩く。途中、勾配のきつい坂道もあったが、鉄の鎖が設けてあったので助かった。 50分ほどで林道車作線と交差。さらに阿武山口バス停まで歩く。そこから30分ほどで阿武山山頂に着く。

 
 武士自然歩道の道標  阿武山山腹に咲くツツジ 

 午後2時20分、阿武山山頂(281.1メートル)に到着。
三等三角点の石標が立っている。
 阿武山は別名、美人山と呼ばれている。昔は樹木がなくツツジのみが生えていて景色がよく、大阪の街からも見ることができたため、山頂には相場の旗振り場が設けられた。
米相場などを手旗信号で順に京都に伝える中継所の一つだったそうだ。
 武士自然歩道に戻り、15分ほどの所にある阿武山古墳(貴人の墓)へと向かう。     
 阿武山古墳は、昭和9年(1934年)、地震観測所建設工事の際に発見された。石室内は漆喰が塗られ、棺台の上には夾紵棺(漆を接着剤として布をはり固めて作った棺で、類例は少なく地位が高い人のものと考えられている)が安置されていた。棺内には、金糸を用いた衣服をまとった遺骸が埋葬されていた。また、ガラス玉を銀線でつないだ枕もあった。これらのことから、被葬者はかなりの地位にあった人物で、大化の改新で中心的な役割を果たした藤原鎌足の墓ではないかと言われた。しかし、正確なことは分かっていない。 


 

ここから後は、府道へ向けて下り坂になる。途中、稲荷神社と少し下った所に朱色の大きな鳥居があった。この鳥居は遠くからでもよく見えるので目印にもなる。
 しばらく山腹を下って約30分、今回のゴールである桑原橋バス停に着いた。

 午後3時32分発、阪急茨木市駅行きの阪急バスに乗車して帰路に着く。歩いた距離は、寄り道も入れて約11キロ、5時間半ほど。少し疲れたが、新緑の中を歩く爽やかなハイキングであった。

阿武山古墳(貴人の墓)