市民インタビュー
第42回
白寿を迎えた俳誌の主宰者
たか
ふみ
さん
 高井さんは、現在99歳。今なお、俳句の会を催し、俳誌を発行されています。
 「翠酔庵」と記された高井さんのご自宅の門をくぐり、山を取り入れた大きな美しい庭が見える2階の部屋で、俳句にまつわる楽しい話を伺いました。
俳句に初めて触れられたのはいつ頃ですか。
 もう、50年ほど前になるでしょうか。安威在住の富士憲郎先生のお勧めで入った安威公民館講座で、この一句を作ったのが始まりです。



 富士先生がお亡くなりになられて4、5年後に、大槻元茨木市長から「俳誌を作らないか」とのお誘いを受け、安威地区から10人ほどが参加しました。そして、俳誌『風雪』が創刊され、その一翼を担いました。 
 平成7年(1995年)8月に『風雪』は廃刊になりましたが、その後を受け継いで、同年10月に月刊誌『山びこ』を創刊し、新たな一歩を踏み出しました。今年、『山びこ』は創刊15周年を迎え、1月に記念合同句集を出版しました。
 俳句の会は、『風雪』が創刊される頃から私の自宅で催しています。現在は、月に4、5回催し、合わせて90人近い会員と共に俳句作りを楽しんでいます。また、俳画や書道の会も開いています。俳画は紙谷・暁星両先生に入門し、書道は60歳になって佐々木鐵仙先生から指導を受けました。
昨年、第23回日本書道学士院展で特別奨励賞をいただき、副賞として、「文子白寿」の落款印をいただきました。

俳句には季語が入っていますね。季語とは何ですか。
 季語とは俳句の中の季節を表す言葉です。季語を入れない俳句もありますが、私は、17文字(5・7・5)の有季定形を守って作っています。季語は美しい日本の言葉を凝縮したもので、自然の美しさや作者の思いを伝えるための大切な言葉です。歳時記にはたくさんの季語が集められています。例えば、秋は立秋(8月7日ごろ)から始まり、星月夜、花火線香、稲妻、法師蝉などの季語があります。
 俳句では、悲しい、うれしいなどの直接的な言葉は使いません。ものや風景に例えて自分の気持ちを表現するのです。それには、風の音や雨の匂い、草花の息吹など、自分の身近な自然に意識を向けることです。

高井さんが目標にしている人、尊敬している人などはいらっしゃいますか。
 俳句を通して出会ったすべての人が師であり、尊敬できる人たちです。俳句には作者が歩んできた人生への思いが込められています。その思いをくみ取り、理解することが私の人生の糧となるからです。


これは卒寿(90歳)を過ぎて作った句で、人様から歳を聞かれたとき、白寿を迎える99歳まで、「卒寿を超えました」と答えてきました。



人生を楽しむ秘訣は何ですか。
  私は子どもの頃から手当たり次第に本を読み、日本文学全集など、大抵の文学書を読みましたが、最近は2、3の俳誌を読むくらいです。映画は戦前、戦後の外国のものが好きです。今も時々娘や孫に連れられて映画館に行きます。心が温まるような映画や、ときにはサスペンスも字幕入りの画面で楽しんでいます。
 しかし、俳句作りは私にとって最大の楽しみです。俳句は命の存在を確かめさせてくれ、新しい勇気を与えてくれます。命あるものすべてがめぐり合わせだということを肝に銘じ、一日一日を大切に過ごしたいと思います。


高井さんの作品の数々